鬱屈した現世
「どないなっとんねん。出張多すぎんねん」
そう捨て台詞を吐きながら、今日も元気に出張中。
僕は倉庫や物流センターに搬送ラインのコンベヤなどを提供する会社に勤めている。
今までシステムの設計・開発を行う立場だったが、どうしても机上での設計はイメージの範疇を抜けられない。
設計段階と実際とでは往々にして乖離が生じるの仕方ないものの、やはり設計者としては正確な図面を現場担当者に送りたい。
そんな思いからに今年の4月、「現場のことをもっと知りたい」という理由で工事部へ異動を志望した。
(しくじったな…)
部署が変わってから、全国各地の工事現場に行かされる。
大阪・高槻に居を構える僕は、月に5日間くらいしか大阪のアパートにいない。
工期に余裕のある現場ならまだしも、工期が短く切羽詰まった現場のときはほとんど帰れない。
8月。
今の現場は工期も最終段階、やっと一息つける。
あとはシステムの細かな調整だけだ。
2連休をもらった。
この1か月くらい休みなく働いてきた。
ボーナスも出たし、少しくらい羽目を外してもバチは当たるまい。
工期の間は市川市の現場近くのアパートを借りて住んでいる。
普段から女性と接点がないうえ、忙しすぎて夜な夜な一人でヌクことよりも睡眠欲が勝ってしまう。
鬱屈した現代社会の中では人間の原始的な欲求を希薄にする。
性欲、食欲、睡眠欲。
どれも充実しているとは言えないが、性欲に至っては、ゼロに等しい。
「アカン」
どうせ仕事人間の僕の休日なんてゴロゴロしてなんとなく過ぎていくのが常なのだ。
そうでもしないと溜まりに溜まった疲れが取れない気がしてならない。
(ん?溜まっているのは疲れだけじゃくて性欲もちゃうんか?)
ふと思った。
「トーキョーならようさんそういう店あるやんか。」
市川駅からJR総武線に乗って東京駅まで行き、地下鉄に乗り換えて、池袋駅まで向かう。
「やっぱりトーキョーは都会やな」
そう思った。
自分が生まれ育った大阪は西日本では一番の都会と信じているが、全国で考えればやはり東京の方が都会な気がする。
大阪は梅田や難波に高層ビルやオフィスが一極集中しているので、狭い範囲に限って言えば大阪は東京に比肩する、もしくはそれ以上の経済力を持っていると言えそうだ。
しかし、全体的に両者を比較したとき、やはり東京に軍配を上げるだろう。
そんな大都会「東京」で風俗店を探すのだ。
他の地方の風俗店よりサービスの質はいいはずだ。
現在に生きるおいらんとは
池袋駅西口で18時にそのツレを落ち合い、西口周辺でお店を探すことにした。
「久しぶりやな」とツレ。
「ああ。大学卒業以来やな」
「久々に会うて、いきなり風俗ってどんな風の吹き回しなん?」
「溜まっとんねん」
「なるほど」ツレはほくそ笑んだ。
「何や、おかしいか?」
「おれも同じや」
同じ境遇の人がいると共感を覚えるとともに、少し安堵感が芽生える。
「昨日おまえから風俗行こうって連絡があったのは、正直良いタイミングだった」
「どういうこと?」
「実は行きたいお店があってん」
「ほう」
「花魁って知ってる?」
「一応、名前だけは…」
「おいらんって名前のイチャキャバ、この間見つけてん」
「ふーん…」
「リアクション薄いなぁ…」
「花魁っていうのはな、江戸時代の遊女の最高位の女性や。昔の遊郭ってのは、一握りの富豪の遊び場だったんやが、今は18歳以上なら誰でも行けるようになった。歴史の変化っていうのにはいつも驚かされる」
「そうなんやなぁ…」
「昔の遊女には階級があって最高位太夫(たゆう)が一般的に花魁と呼ばれていた。
江戸時代の一流の高級遊女は、舞踊、和歌、お茶やお花、琴や三味線などの教養とともに美貌を持ち併せた一握りの存在だった。
その後階級が多様化し、遊郭遊びが次第に庶民に浸透しいくと、花魁の価値が相対的に下がっていった。花魁は時代ととともに衰退してったんや…」
なるほど。
今の風俗はその歴史の延長線上にあるわけか。
「ふーん…。てか、何でそない詳しいねん」
「大学1年の一般教養の講義で花魁の歴史っての取ってたんよ」
ここで言わなければおそらく墓場までその役に立たない知識を持って行ったに違いない。
某有名塾講師の名言の如く「いつやるの、今でしょ!」だ。
「いつ言うの、今でしょ!」と言わんばかりに。
そんな一部の歴史オタクが喜びそうなトリビアを知ったところで一抹の共感も生まれないが、道中の暇潰しにはなったのかな。
「さて、現世に生きる花魁がどないなもんか、お手並み拝見やな」
とツレが胸を躍らせるように言った。
歴史上の花魁にはさして興味はないが、おいらんには興味がある。
駅から歩いて2分後くらい。
おいらんと思しき立看板が見えた。
かつての遊郭を唆すような傘をさした和服を着た美女がこちらを見ている。
さっきの話で脳内に保存されていた花魁・遊郭というキーワードと今網膜に映し出された立看板の像が脳内で化学反応を起こす。
脳内でシナプスが活発に動き回っている。
ドーパミンがどばどば溢ふれ出すような感じだ。
男は単純だ。
和服の風俗ってそんなにないもんなぁ…。
それにしても和服はなんかエロい。
きちんと着ていれば清楚でお淑やかだが、はだけて少しそれが乱れるだけで独特の妖艶さが滲み出る。
AVの見過ぎだろうか?
否。
それはこれから行くおいらんが証明してくれるだろう。
「4階やな」
現代風の遊郭を歩いてみる
「おぉ~、ええやん」
そうツレがこぼしたが、確かに雰囲気はいい。
この鬱屈した現世とは隔離された空間にいるようだ。
程なくして奥から店員が出てきて、待ち時間が10分程度であると伝えられた。
即決すると料金システムについて説明してくれた。
金曜のこの時間帯は1セット40分5980円。
金・土・日はこの値段だ。
他の平日は値段が若干安い。
時間によって値段が変動する。
22時以降の値段が一番高い。
勿論、延長・指名もできる。
入口で靴を脱いで下駄箱に入れる。
店内に入ると、料金を支払い、フリードリンクを選ぶ。
それから、店員に続いて通路を進む。
鮮やかに彩られた店内は予想していた以上に広い。
最初に洗面台が並んだ一角に案内され、手洗いうがいを済ませる。
その後衝立で仕切られた座席スペースが3~4席ある小部屋に案内された。
ツレとビールを飲みながら談笑しながら待ち時間を過ごす。
「いよいよやな」
「うん。楽しみになってきた」
待ち時間というのはいつも緊張して落ち着かない。
合格発表を控える受験生さながらの気分で心の中で砂時計を傾かせ始める。
その後10分程して、座席スペースが7~8席ある大部屋に移動する。
ここでツレとは別々の部屋になる。
店内は明るく周囲の部屋から楽しそうな会話や笑い声が聞こえる。
ただし、座席スペースは左右を衝立で仕切られているため、遮音性は高そうだ。
天井をふと見上げるとミラーボールが見えた。
ここまでは十分遊郭と思しき雰囲気を楽しんでいたのにミラーボールで台無しだ。
江戸時代の発明の鬼才・平賀源内でさえミラーボールを開発したという史実はない。
まぁ、これが現在風の遊郭なんやな、と思うことにした。
座席スペースには、椅子はなく枕の付いたマットが敷かれている。
(ここで、「おいらん」とイチャイチャするんやな…)
背の低いテーブルがあり、灰皿やメニューが置いてある。
何気なくメニューを手に取って覗いてみる。
(ドンペリ置いてあるんや…)
程なくして、丈の短い着物を着た女性が登場した。
おいらんA
僕「こんばんは」
A「今日はお休みですか?」
僕「休みです」
20代後半の中肉中背の女性だ。
やや色黒な肌はスポーツウーマン風だ。
彼女は赤地に柄入りのいかにも「おいらん」らしい着物を纏っていたが、下は超がつくミニスカだ。
これがいかにも現代風だ。
仕事中はブラ着用禁止らしく、胸元を開くとすぐに吸い付けそうだ。
会話も上手で話が盛り上がる。
また、適度な加減で会話の合間にディープキスを挟んでくれる。
A「横になりませんか」
僕「はい」
横になってから適度に会話しながら、ディープキスでお互いの舌を絡め合わせる。
胸を食していると、耳元で囁くように喘ぐ。
A「脚も触ってもいいんですよ」
僕「それは店員がNGって言ってたような…」
A「それはVゾーンの内側がNGなだけで、その他はOKなんです」
僕「まじか!」
それを聞いた途端僕の各所の筋肉は活性化し、ミトコンドリアのATP合成が活発になる。
僕の運動量は増え、彼女の体を至る所を貪り始めた。
その後もしばらくモミモミ・ペロペロしていたら彼女の手が僕の股間をイジイジし始めた。
交感神経が刺激され、性的興奮が高まる。
股間の隆起に抗えないのは動物としての原始的な本能だ。
A「すごくたってる~」
僕「これじゃ、外歩けないね」
そんな感じのやり取りの中、彼女の名前が呼ばれて交代の時間になった。
おいらんB
僕「こんばんは」
1人目の大人な女性から一転して女子大生っぽい女の子が登場した。
黒字に柄が入った超ミニスカ着物を纏い、黒のニーハイを履いている。
色白でくっきりした目が可愛らしい女の子だ。
カラコンで黒目の面積が大きくなっていることも可愛らしさを助長してくれる。
年齢は僕より5歳くらい下くらいだろうか。
見た目とは裏腹に雰囲気は落ち着きがあり、話も上手だ。
B「もう一杯飲みますか?」
僕「そうですね」
間髪入れずに彼女が店員にオーダーしてくれる。
すると、程なくして2つのビールが運ばれてくる。
お互いグイっと一口ずつ飲むと、横に寝転がって密着する。
不思議と彼女のそばにいると心が落ち着くようだ。
そして、ディープキスから始める。
肉厚な舌触り。
情熱的なキス。
いつもの手筈通り、自然と胸に手が伸びる。
胸元を開くと、可愛らしい乳房が露わになる。
薄茶色の乳首に500円玉くらいの大きさの乳輪。
女性は興味深い生き物だ。
普段はお淑やかな女性でも、いざ「その時」になれば咲き乱れる赤い薔薇のように内に秘めた性を開花させる。
原初より人間のDNAに刻まれた性の本能には抗えないのだ。
そんな女性の表と裏を観察するのが僕は好きだ。
金属に与える力がある値以上になると、塑性が始まり変形が生じる。
その値を降伏点という。
観察とは実験でもある。
僕は今まさに実験の最中だ。
まず右側の乳首を舐めてみる。
右の乳首をペロペロ舐めていると、乳首が硬くなって大きくなるのがわかる。
右乳首の降伏点は10くらいとしよう。
次に左側も同様にペロペロ舐めまわしてみるが、右側のような反応は起きない。
なかなかの強度の乳首だ。
しかし、被験者Bの身体の反応や顔の表情を観察していると、もしかしたら左の方が感度が良いのでは、と推測できる。
さらに舐め続けて、歯の先端で乳首を優しく噛んでみたり、舐める速度に緩急をつけてみたり、舐め方のバリエーションを変えてみて、集中的に舐め続けた。
すると、少しずつムクムクと大きくなってきて、固めの小豆になった。
お!と僕は心で歓喜の声を上げる。
さらに舐め続けると色っぽい艶のある声が聞こえてくる。
(ええやん!)
結果は右10、左45ってところだろうか。
女性の乳首は左右対称についているが、強度(感度)は対称ではないことが実験の結果分かった!
次に着物とニーハイの間にある太ももや着物に隠れたお尻をスリスリと触り始める。
勿論、美味しいディープキスも合間に挟みながら。
そんな中、彼女も僕の下半身に興味を持ったのか、「実験」を始める。
スリスリと僕の肉棒にズボン越しに触る。
「お姉ちゃん、アカン」
「何がアカンのですか~」
と僕の発言を右から左に流すように、触り続ける。
僕の発言に火が点いたのか、彼女の攻めがエスカレートしていき、タマと竿の付け根まで撫でまわす。
合間合間にディープを挟みながら。
ズボン越しなのに、かなり気持ちがよくて僕は思わず悶えてしまう。
僕の下半身は噴火前の火山の如く、ギンギンに成長していた。
「これ白いやつそろそろ出さないとヤバいんじゃないですか~?」
意地悪な女だ、と僕は思う。
「何言ってんねん。もういい大人なんだからコントロールくらいできるわ」
と言いつつも、身体は正直だ。
「ふ~ん」
と僕を見下すように吐き捨てる。
まるで僕の肉棒の降伏点が5であることを知っていたかのように。
プレイが終わってツレと合流した。
「どうやった?」
「最高だった」
「俺も」
お互い満足したようだった。
「もうちょっといたかったなぁ」
「俺も。せやけど、長引けば長引かせるほど、泥沼にはまっていくで。寂しいかもしれんけど、そのうち懐が寂しくなるのがオチや」
「そうかもしれん」
「それほど、最高なサービスをしてくれたおいらんはさすがや!」
「そうやな!」
僕らは後ろ髪を引かれる思いで店を後にした。
池袋で新たな刺激を求める人へ
和服はエロい。
日本の伝統的な和の要素をエロに転化させるという発想はなかなか面白い。
そこらへんのセクキャバでは得られない刺激が得られるのがこのおいらんというお店だ。
かつて存在した高級遊女「花魁」は一握りの富豪でしか手の届かない存在だった。
しかし、現在の「おいらん」はサービスの質・美貌という点ではかつての「花魁」となんら遜色はないのではないだろうか。
(かつての「花魁」など知るはずもないが…)そんな「おいらん」がこの現世で、しかも私たちの手の届く存在にある!この「おいらん」と一緒にエッチしないのはあまりに勿体なくはないだろうか。
おいらんは池袋駅西口を歩いて2分。
ケンタッキー・フライド・チキン「KFC」の看板がある通りを真っ直ぐ歩いていくとファミリーマートがある。
その隣の建屋の4階がおいらんだ。
日常生活に渇きを感じている方は是非一度足を運んでみてはいかがだろうか。
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